当研究室は,触媒作用の分子論的理解に立脚した分子レベル・ナノレベルでの触媒の設計に基づく「環境保全・浄化に有効なシステム」「高効率な分子変換プロセス」の構築を目指しています。「触媒」をキーマテリアルとする環境に調和した化学により「環境・エネルギー・資源」の課題に取り組んでいます。
Design of high-performance catalysts for selective transformation of chemicals, environmental catalysts, in situ spectroscopy
Catalysts can play an essential role both in selective transformation of chemicals and in solutions to environmental and energy problems. Our group focused on the design of a new and high-performance catalyst for selective transformation of chemicals, and for the reduction of environmental pollutants on the basis of understanding at the atomic or molecular scale. Our research targets include solid acid-base catalysts, photocatalysts, and highly functionalized metal or alloy catalysts. In addition, to understand the reaction mechanisms at catalyst surfaces, this group is performing several in situ spectroscopic techniques.
私たちの研究室では、「触媒」を研究対象としています。「触媒」は、現代社会において欠くことのできない物質です。我々の身の周りの製品のほとんどは、「触媒」を利用して製造されています。空中窒素固定法、すなわち代表的なアンモニア合成法であるハーバー・ボッシュ法は、鉄触媒が用いられています(1918年にFritz Haber先生がノーベル化学賞受賞)。また、2010年のノーベル化学賞は、鈴木章先生、根岸英一先生、Richard F. Heck先生が受賞されましたが、これらはいずれもパラジウム触媒を基本とするカップリング反応に関するものです。この他にも野依良治先生、Barry Sharpless先生、William S. Knowlesによる不斉触媒に関する研究(2001年)、Robert H. Grubbs先生、Yves Chauvin先生、Richard R. Schrock先生によるメタセシス反応に関する研究(2005年)、Gerhard Ertl先生による固体表面の反応過程の研究(2007年)など触媒に関連する研究に対して多くのノーベル化学賞が授与されています。
「触媒」は、大変有用な物質ですが、これまでその表面で起こっている現象の中身(化学)はよく分かっていない部分が多く,そのため、触媒の設計は経験的な方法に頼った部分がありました。ところが最近では、分析手法や理論化学計算の手法の進歩に伴い、表面の構造や電子状態を化学反応が起こる時間スケールで解析することが可能になりつつあります。私たちは、X線、赤外線をはじめとする、いろいろな分光法を駆使することによって触媒表面で起こっている現象の化学を明らかにしようとしています。また、これをもとに高機能な触媒が備えるべき性質や、改善すべき点などを抽出し,この知見をもとに高機能な触媒の設計・構築を行うことで、新しく高効率な分子変換プロセスの構築や環境保全・浄化に有効なシステムの構築を目指しています。「触媒」をキーマテリアルとする環境に調和した化学により「資源・環境・エネルギー」の課題に取り組みます。